「高志、ボタンが外れてるぞ」
「あれ?」

ボタンがなくっていることは、
高志が教室に戻ってすぐ、友達に言われて気がついた。

「落とした?」

なくなっていたのは、胸のボタン。
ちょうど弓倉に言われて筒をかかえていた場所。

だからたぶん、ボタンが落ちているとすれば弓倉と一緒に歩いた廊下と階段。

あるいは、旧校舎。
弓倉とわかれた準備室の前。

(もう一度、行かないと・・・)

高志は、弓倉のことを思う。
ボタンを探している姿を見られれば、またからかわれそう。

だが、

(それもいいかも)

高志は、ちょっと思う。

先生、というか、女の人とあんなに正面を向いて話したのは初めて。

普段は自分の背の低さが気になって、クラスの子達ともあまり話ができない。

まあ、途中の廊下で見つかればそれっきりなのだが・・・・・・。

高志は、その日最後の授業が終ると、そっと周りを気にしながら教室を出た。