ビクッとする高志。

弓倉は一瞬、教科書に目を落とし、
また高志の方を見て、

「では、ここの所を」

と、高志に何かの質問をする気配をみせた。

(まずいっ)

弓倉を見つづけながら、授業とは全く関係ないことを考えていた高志。

ここも、どこも、分からない。

高志は、ぐっと首をすくめる。

すると弓倉は、ちょっとだけ訝しげな顔をして、視線をずらし、

高志ではなく、高志の隣の生徒を指名してくれた。

(ほう)

高志は息をつく。
そんな、高志をちらり見る弓倉。

気のせいかなんとなく笑っているような顔。

それで高志は気をぬいて、
次の瞬間、

とっても難しい問題を思いきり油断しているところにぶつけられた。