「うむ」

弓倉の、どう聞いても了承したようには聞こえない生半可な返事。

準備室そなえつけの事務椅子にすわり、
同じく事務机に肘を置いて笑ったままの顔でいる。

「もうっ」

高志は弓倉の前に立つ。

「それにまたコーヒーですか?」

弓倉の机には、
電気式のコーヒーメーカーが置いてあり、
弓倉が握るカップには、そこから注がれたばかりらしいコーヒーが湯気をたてて満たされていた。

「ああ、説明するなら無糖でかなり濃い。少年の言う泥のようなというやつだ」

弓倉は、そう言ってカップに口をつける。

「そんなのばかり飲んでいると身体を壊しますよ」

高志は慣れた調子で弓倉に説教し、丸椅子を一つ引き寄せると弓倉と向かい合って座る。

弓倉はカップの向こうから高志を見つめ、
数回、瞬くとカップを置いた。