どばあ。

弓倉の思ったとおりの図で、
高志がまたもや背中を押されて自分の胸に顔を埋める。

そのもがっきっぷりと、
必死に顔を離そうとする健気さ。

「うむ、これが君の素質だな」

何から何まで思ったとおりに動く少年を抱いて、弓倉はつぶやく。

「え?先生、何か言いました?」
「いや、頑張れ少年。次の駅までの辛抱だ」

乗客を詰めるだけ積んで動き出す列車。
高志と弓倉は密着し、その間にはもはや髪の毛一本入らない。

「個人的には悪くない・・・・・・」

弓倉は何気に高志の手に頭を置いて、高志には見えないように笑みをつくった。

「先生なんですか?聞こえないです」
「知らないでいい、独り言だ」