「あそこが街の中心だからな、この車内の人間の9割はそこで降りる」

「つまりそこまでは満員、過ぎれば空き空きというわけだ」

「特に今日はあちこちでイベントが重なっているらしいから、混み具合も5割増し。と、言っているうちにまた乗ってくるぞ」

「え、え、うわっ」

駅に停車する電車。
ホームに列を作っていた人間がさらに押し合いながら中に入ってくる。

「ほら、もっと近くに寄れ」

弓倉の正面に招き入れられる高志。
半歩移動すると同時に後ろから押され、今度こそ完璧に弓倉の胸の中に突入してしまう。

「うぶっ・・・・うぱぁっ」

高志は本気で息を詰まらせ、
めり込んだ顔をもがもがと懸命に左右にふって、必死に顔をあげる。

弓倉を見上げ、これ以上なく恥ずかしさに頬を染めて首をすくめる。

「ごめんなさい」
「謝ることはない、それよりも・・」

乗り込む客はの押し合いはまだ続いている。
弓倉は、高志の後ろから迫って来る人の波を十分に見とどけて高志に警告。

「無駄な抵抗はやめて大人しくしていた方が身のためだぞ」
「な、何ですかっ、ぐわあ」