「…もぅ…ムリだぁ…;」



とうとう宮野が机に崩れ落ちた。暑くなるに連れて長くなっている夕日の光が、教室を照らしている。それでも薄暗く、なんとか目を凝らして見た時計の針は6時を少しまわっていた。



「何だよ、だらしないな。まだ1時間半しか経ってないじゃないか。」
「1時間やったじゃねぇか…。」
「お前の成績持ち直すには、3時間やっても足りないくらいだぞ」
「ぅわ、ありえねぇ…。つーか、まず無理だろ、3時間なんて。…旭はどんくらいやってんだよ、勉強」
「テスト前は4、5時間。」
「……お前すごいな…?」
「そうか?」



そんな大したこと無いとは思うことだったのだが、明らかに宮野は顔を歪めていた。
それを半ば無視して、俺は教科書やらノートやらを片付けて、鞄を持って立ち上がった。



「…もう帰るんだったら、問題集の残りやってこいよ?」
「げ;残りってまだ10ページぐらい有るじゃねぇかッ!」
「頑張ってこいよ。明日は違う教科見てやるから。」
「旭って本気でスパルタ…。」
「そんくらいにしなきゃ、お前サボるだろ?」
「……;」



最後の言葉が図星だったのだろう、宮野は苦笑いを浮かべるだけで何も言わなかった。
そんな宮野に、じゃあな、と言葉を置いて教室を出た。



「あ〜さひ〜ッ!サンキュ〜な〜ッ!!」



教室2つ分くらいの距離を歩いていると、後ろから宮野の大声が聞こえた。
俺はそれき手を挙げるだけで応えて、そのまま学校を出た。