薄暗い室内。全面ガラスで覆われている窓の外を眺めながら、ラファエルは静かに言った。

「ええ。間一髪ではありましたけど、私は姉を信じておりましたから」

ヴェイトはにこりと笑った。

「ところでラファエル様、少し聞いてもよろしいでしょうか」

「なんです?」

「単刀直入に伺いますわ。
若…いえ、ラファエル様は今回の件、あの研究施設のことといい、全てをご存じだったのではありませんか?」

ラファエルが回りくどい言い回しを嫌うことを知っているヴェイトは、直球を相手に投げ掛けた。

ちらりと目をヴェイトのほうへ向けるが、またすぐに視線を逸らす。

「どうやらあなたは、私を少し買い被りすぎているようですね。
いくら私でも、施設があの空間内に取り込まれたこと、そしてタスクがそこへ向かっていたということまでは、予測できませんでした。
あの兄たちでさえ、必死になって探していた施設(もの)でしたからね。
それにあの調査の件は、君に一任していたはずですよ」

「…そうでしたわね。それに関しては私のミスです。申し訳ございません」

ラファエルがこちらを見ていないことは承知の上だったが、それでもその背中に向かい、ヴェイトは深々と頭を下げた。