姿は見えない。

トヲルも初めはかなり驚き戸惑ったのだが、今ペルギウスはトヲルの『中』にいた。ペルギウスの言葉で言うと、トヲルの身体に『寄生』している状態なのだという。

「ペル…、まさかまた、僕の心の中を読んだんじゃ?」

気持ちを見透かされたように感じたトヲルは、眉を顰めながら聞いた。

現在『寄生』している状態のペルギウスには、トヲルの感情がそのまま伝達されてくるらしい。つまりその宿主の心情を読み取ることなども、簡単なことだというのである。

そのことを聞いたトヲルはペルギウスに対して、即座に「それだけはやめてくれ」と懇願していた。

他人に自分の心の中を覗かれることは、やはり抵抗があるのだ。

ペルギウスは「人間の思考には興味があったのじゃが…」と頻りに残念がっていたが、それを遮断することもまた可能ということで、渋々その願いを受け入れたはずだった。

《心を読まずとも主の考えておることは、我にも分かる》

ペルギウスは静かに言った。

その言葉に動揺の色は見えなかった。もっともペルギウスの場合、小動物の姿をしていた頃から、あまり感情を表に出すところを見たことはなかったのだが。