辺りは何事もなかったかのように、しんと静まり返っている。

開いた天井から暗いこの地下に、一筋の光明がペルギウスの全身を包み込んでいた。崩れかけた壁に、凭れるように座っている。

《力の加減が、まだまだなようじゃな。器を壊さずに『闇の者』のみを倒すには、もう少し時間が必要なようじゃ。しかし…》

ペルギウスは何かを考え込むように、右掌をじっと見詰めていた。

ふいに近くで、気配を感じた。

ペルギウスは座ったままの姿勢で、目だけをその方向に向ける。

いつの間に上から降りてきたのだろうか。コウヅキが左手で銃を構えながら、立っているのが見えた。

「あんた、一体何者だ?」

自分に問い掛けるその姿が、一瞬ぐらりと揺れた。

コウヅキが揺れているわけではない。そのことは、ペルギウス自身にも分かっていた。

自身の結界のおかげで致命傷にまではいたらなかったものの、身体からは大量に出血していた。そのせいで既に立ち上がることさえ、できなくなっていたのである。その上辛うじて、意識を保っているという状態でもあった。

コウヅキがこちらにゆっくりと近付いてきているのを感じながら、徐に目を閉じた。