床についた自分の手が歪んでみえる。頭がくらくらするようだった。

トヲルにはそれらが全て、非現実的なことのようにも感じられた。

身体に力が入らない。実感が湧かない。

今目の前で起こっていること、先程見てきたものまでが、遠い何処かの場所での出来事のように思えてきていた。

だが無情にもこの異臭が、トヲルの現実逃避を許さなかった。

「アイのおトモダチ。そして、みんなのおトモダチよ」

恍惚としたようなアイの声が、集団の奥から響いてくる。

アイの姿は奥に隠れて見えなかったが、前にいる集団のほうは、じわじわとこちらに迫ってきているのを感じた。

「みんなも遊びたいんだって。
ねえ、遊ぼうよ。そうしたらみんな、おトモダチになれるよね」

それを合図に、集団が一斉にこちらへと襲いかかってきた。