うさぴょん号発進せよ

隣へと通じる扉は簡単に開いた。

コウヅキから僅かに遅れるように2人と1匹も後に続き、きょとんとした顔でそれを見送っているアイの横を擦り抜ける。

中は先程の部屋とは違い、薄暗かった。しかし部屋の中央付近に浮遊している無数のモニターが灯りの役目をしており、部屋の中を見渡せるほどには明るい。

モニターの中をよく見ると、何処かの部屋の中や廊下などが映し出されている。

しかしトヲルがこの部屋に入って、真っ先に気付いたのはそんなことではなかった。

(なんだ?この臭い)

トヲルは顔を顰め、鼻を押さえた。鉄の錆びたような臭いが、辺りに充満していた。

「オヤジっ!?」

部屋の隅の方から、コウヅキの声が聞こえてくる。

トヲルもその方向に向かって足を踏み出しかけたのだが、ぴしゃんっと、何かが足元で跳ねた。

(水たまり?)

よく見るとこの部屋の床には、水たまりのような黒々としたものが、あちこちにできていた。

「お父さんっ!」

ミレイユが駆け寄った先には、ヒトが一人倒れていた。口から血を流し、胸を押さえて苦しそうな表情をしている。