『誰もいねぇな』

通路を抜けると、直ぐに操舵室に行き当たった。

この船は、トヲル達が乗ってきた小型船よりも若干大きかったが、中はかなり狭い造りになっているようだ。

『そう。もう既にここから脱出しているようよ』

トヲルとミレイユで他の部屋も一通り見てみたのだが、やはり人の気配は全くなかった。

何となく拍子抜け、である。

(でもそうすると、父さんと母さんは何処へ?それにペルの言ったことは…やっぱり、勘違いだったのかな)

『それじゃ、もうここにはいないんだな?』

コウヅキはマシンの赤く点滅している箇所を指で触り、確かめるように聞いた。程なくして、その点滅は止まる。

『いいえ。まだ確認していない場所があるわ』

球体は操縦席に体内から伸びた数本のコードを繋ぎながら、ふわふわとフロントガラスに近付いた。

『あのドームの中よ』