《ほんの一瞬だけじゃ。しかし、直ぐに気配は消えてしまったようじゃがな》

「どういうこと?」

《何かに邪魔をされたか、或いは…》

「トヲルどうしたの?誰かそこにいるの?」

ノックの音と共に、ミレイユの声がドアの外から聞こえてくる。

トヲルは飛び出すように慌ててドアを開けた。

「だ、誰もいないよっ」

「そう?」

ミレイユは部屋の中を覗き込みながら不思議そうな顔をした。どうやらトヲルの声が、外にまで漏れていたようだ。

(ペルのこと言っても、どうせ信じてもらえないしな。僕にしか声は聞こえないわけだし)

「あ、この部屋って思ったよりも酷くないんだね。ビル艦長の中なんて、もうメチャクチャだったよ」

「そんなに凄かったの?」

「うん。お酒の瓶が足の踏み場もないほどに…て、そんなこと言いに来たんじゃなかった。
ヴェイトがね、直ぐに操舵室に全員集まってほしいって」