「どっ、どっ、動物が喋ってるっ!?動物が喋ってるよっ、ねぇ、コウヅキ!」

思いも寄らない出来事に、パニックに陥ったトヲルは、隣にいるコウヅキの肩を、ガクガクと強く揺さぶった。

「…っ!るっせーぞっ!」

ゲシッ…という音と共に、トヲルの顔面中央に拳が炸裂する。

「それに、動物が喋っただのって、ワケわかんねぇ」

「へ?」

顔を押さえ涙目になりながらも、トヲルは聞き返した。

「コイツが喋るわけねぇだろ。俺には何も聞こえねぇぜ」

(もしかして僕にしか聞こえていないって、こと?)

《我が同胞の気配は…もはや感じぬ、か》

ポツリと呟いた小動物は、いつの間にかトヲルの膝の上から身を乗り出し、窓の外を眺めていた。

食い入るように眼下を見詰めるその瞳には、哀しみの色が宿っているように、トヲルには感じられた。