その後タスクは、軍に見つからないようにミレイユを数日間、廃墟で匿っていた。

だがある日、ミレイユの様子がおかしいことに気付いた。そして、親しくしている軍医に診てもらったところ、心臓に欠陥のあることが判明したのである。

大きな病院で、適切な治療をすれば直る見込みがある、と軍医からは伝えられた。

当然軍には、それを治療できる設備などなかった。

程なくしてタスクは、部隊を脱走することを、コウヅキに告げたのだった。

部隊を脱走するということは、弱い負け犬のすることだ。

コウヅキは脱走する者にはいつも、軽蔑の眼差しを向けていた。

しかしタスクは

「あの母親と約束をしたからな」

と、ポツリと呟いただけだった。