蜜花 -First.ver1-


「閑玖にも…そんな人いるの?」

「ん…過去の奴にしたいところだけどな。」

そう言って、また寝転んで背中を向けた。




あたしには、透がいる。

そして閑玖には、千代がいる。

―…なのに、なんでこんなに上手くいかないんだろうね。




「…嘘はつくなよ。」

「…え?」

閑玖はあたしに背中を向けたまま、続ける。

「嘘だけはつくな。…じゃないと、後悔する。」

「うん…。」

「自分の気持ちに正直になれ。んでもって…。」

閑玖はよいしょ、っと起き上がりあたしを見つめた。

「俺みたいになるな。」

そして立ち上がり、ランニングに戻っていった。



―俺みたいになるな―


閑玖…みたいに?


あたしは閑玖の背中を見つめながら、切ない瞳を思い出していた。