「閑玖にも…そんな人いるの?」
「ん…過去の奴にしたいところだけどな。」
そう言って、また寝転んで背中を向けた。
あたしには、透がいる。
そして閑玖には、千代がいる。
―…なのに、なんでこんなに上手くいかないんだろうね。
「…嘘はつくなよ。」
「…え?」
閑玖はあたしに背中を向けたまま、続ける。
「嘘だけはつくな。…じゃないと、後悔する。」
「うん…。」
「自分の気持ちに正直になれ。んでもって…。」
閑玖はよいしょ、っと起き上がりあたしを見つめた。
「俺みたいになるな。」
そして立ち上がり、ランニングに戻っていった。
―俺みたいになるな―
閑玖…みたいに?
あたしは閑玖の背中を見つめながら、切ない瞳を思い出していた。

