それから何十年後。


時は彼らの髪を鮮やかな白色へ染めあげた。



「ちょっと・・・・もう少しゆっくり歩いて下さいよ」


子育ても終わり、少し貫禄のついたいつかの彼女がいた。



男は肩を張ったまま立ち止まり言った。


「君ならついてきてくれると思った」


老男は一度、彼女を見ると軽く微笑み、また歩きだした。


「何を言ってるの?」



老女は立ち止まり、彼に微笑みまた歩きだした。


老女は誰に向けるわけでもなく、少し嬉しそうにつぶやいた。


「なんて遅い返事でしょう」



二人は空を見た。


にわか雨はやんでいた。


by sapphire