思わず出た自分の声にはっとするがもう遅かった。

口を噤んだ彼に己の失態を知る。

「…すみません」

歯止めがきかなかった。

笑って流すほど私はまだ過去にはできていなくて、些細なことで簡単に溢れ出す。

「いや、ごめん」

「いえ、すみません。今日はもう失礼します」

気まずい雰囲気にも零れ落ちそうな涙にも耐えられそうになくて、逃げ出そうと踵を返すと、腕を掴まれた。

「な」
「じゃあ、」

何ですか、と言おうとした言葉は彼に遮られる。

「じゃあ、今夜は俺が誘ってもかまわないよね?」

「…え」

「予定、ないんだろ?」

「はぁ、」

「よし、じゃあ行こう」

「は?え、ちょ」

呆然としているうちにぐいぐい腕を引っ張られる。

「待ってください!」