『あっ!え〜と…ゆりさんだよね?』


ドアを開けて突っ立ったままの私を見るなり、数日前に面接した店長が声をかけてきた。


慣れない源氏名を呼ばれ、慌てて返事をする。


「あっ、はい!」


『こっちで着替えてくれる?』


通されたのは幾つかのロッカーが並んでる狭い更衣室。


色々な香水が入り混じった匂いに、むせ返りそうだ。


私は普段絶対に着ない(従姉妹の結婚式用に買った)ブルーのシルク生地にシルバーのラメがちりばめてある、お気に入りのワンピースを着た。


ドレッサーの鏡に映る自分の顔を見て、


よし!頑張るんだぞ!


と気合いを入れて更衣室のドアを開ける。