恋人は隠れ既婚者【前編】



仕方なく歯磨きをして、部屋に足を踏み入れると、電気が消されていて真っ暗になっていた。


「ちょっと、ちょっと!!
真っ暗で見えないじゃない!」


『さあて、俺も歯磨きしよ!』


声と共に黒い影が近づく。


さが兄が私の横を通り過ぎると、ふわっとした彼の匂いが鼻をくすぐる。


洗面所で歯磨きをしている彼。


真っ暗で部屋の入口から動けなかったけれど、何秒か経つと窓からの薄明かりで部屋の中が見えるようになった。


目を懲らすと、二つの布団は部屋の端と端に離されている。








どういうつもり???