私が窓の近くに座るのは、

美術室からは運動場がよく見えるから。


* * * * * *
きらきら

渡舞子
松本航平
森住小夏
* * * * * *


「あ、コケた」

「いけッ!」

「何だそのシュートは!!」


美術室に響き渡る一つの声。


私、渡舞子の声ではない。



「小夏うるさい!」

「だってぇ舞子のダーリンがさぁ……」

「『だってぇ』じゃない! ダーリンとか言わない!!」

「じゃあ、旦那サマ?」


そうニヤリと笑いながら言うのは、森住小夏。

高校に入って最初にできた友達。

見た目は遊んでそうだけど、実は成績優秀。

他校に彼氏有り。



「てか今日デートじゃなかったの?」

「まだ待ち合わせまで時間あるんだもん」

「時間潰すのは構わないけど、静かにしてて。締切もうすぐなんだから」

「いいじゃーん。ウチらしかいないし。今日美術部無い日でしょ?」


そう言って小夏はまた窓の外を見た。


何だかんだ言いながらも、さっきより静かにしてくれているようだった。




「おっ、旦那のチーム勝ったっぽいよ!」


展示会の締切が迫っていて大変だけど、やっぱり航平が気になってしまって、座って筆を持ったまま運動場の航平を探す。


――あ、バテてる。


「『素敵よ航平ッ』とか思ったでしょ!?」

「別に思ってないし」

「えー」


少しだけ嘘。

ちょっと思ったなんて言ったら馬鹿にされるかな?



「あ、そろそろ行くわ!」


時計を見ながら、素早くバッグを持ち上げる小夏。


「ばいばーい」


私がそう言った頃にはドアに向かって歩きだしていた。


「頑張ってね。旦那に見とれて失敗しないよーに!」

「はいはい」