こんな私でいいですか?

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バランス

栗沢明日香
仁科奏介
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「わぁッ!!」


栗沢あすか、高1。

私には悩みがあります。


「……ほら。」


それは……


よく転ぶことです。

しかも何もないところでも転びます。


「ありがとぉ」


そう言って目の前に差し出された手を握った。


無言で私を立たせた彼は仁科奏介君。

通称:奏ちゃん(私しか呼んでないけど)。

私の彼氏です。


「大丈夫か?」

「う、うん!」


私が答えると繋がれていた手は離され、奏ちゃんはまた歩きだした。


奏ちゃんみたいな人をクールって呼ぶんだと思う。

奏ちゃんは口数が少ない。

だから登下校はもちろん、一緒にいる時は私ばっかり口を動かしている。


別に気にしてないよ?

だって奏ちゃんが好きなんだもん。


でも、時々不安になるんだ。



「あ! この前借りた500円返してなかったね!」


そう言って私は鞄のチャックを開け、お財布を取り出した


……が、


お財布を開けるのを奏ちゃんの手によって阻止されてしまった。


「?」


不思議に思って奏ちゃんの顔を見ると、奏ちゃんは口を開いた。


「学校着いてからでいいから。またばらまかれたら困る」

「……ぁあ! その節は……」



それは2日前のこと。

販売機でジュースを買おうとして、小銭を探しながら歩いていたら、転んでお財布の小銭をばらまいてしまったのだ。



私は「へへっ」っと軽く笑いながらお財布を鞄に戻した。


笑う私とは対照的に、奏ちゃんが軽くため息をついたように見えた。



不安になるんだ。


私はよく転んで迷惑かけるし、友達からどっか抜けてるって言われる。

そんなんじゃ奏ちゃんに嫌われちゃうんじゃないかって……。