名無しのラブレターの差出人は同じクラスの男子だった。

私が驚いていると彼は

『友達からでもいいんだ』と言った。


* * * * * *
拝啓 プリンス

植田愛美
宮城遥
* * * * * *

「ごめんッ、待った?」

「ま、待ってないです!」


すると彼は『何で敬語?』と言って笑った。

走ってきたらしく、息を切らしていた。


* *


ラブレターをくれた“彼”宮城君。

同じクラスだけど話した事は無かった。


宮城君はクラスで特に目立つっていう存在ではなかったけど、普通に格好良くて、落ち着いた雰囲気の持ち主で……

影で『プリンス』と呼ばれている事は女子の間では有名です。


だから差出人が宮城君だって分かったときはびっくりした。


* *


今日は、宮城君に誘われて一緒に帰ることになったんだ。

もちろん今日が初めて。


この間まで好きな人がいたのに、

正直、舞い上がり気味の私がいた。



「吹奏楽って大変じゃない?」


歩きだしてすぐ宮城君に聞かれた。


「んー。たまにキツい時あるけど、楽器吹くの好きだし、大変ではないよ!」


今度は敬語じゃなく答えた。



「宮城君は?」


「弓道? 楽しいかな。って言っても高校入って始めたし、1年だからほとんど射た事ないけどね」


そう言って宮城君は笑った。

私もつられて笑顔になったけど、


「そうなんだぁ」

しか言えなくて、

気の効いた事が言えなくて……

話はすぐに終わってしまった。


何か話題を出そうとしたんだけど、何も思いつかなくて……

落ち着かない空気が流れる。