私には2人の幼なじみがいて、そのうちの1人に恋をした。

でも後になって気付いたんだ。

もう1人の大切さに。


* * * * * *
隣にいた人

市村千花
深見恭二
* * * * * *


比呂(識の元カノ)の話をしてから茗の様子がおかしい……気がする。

いつも通りなんだ。

いつも通りなんだけど……。



「千花ちゃん? 顔暗いよ?」

「恭……」


前から恭が歩いて来て、私の前の席に座った。


「悩み事? あんま悩むとハゲるよ?」

「バカ」


恭は『人が心配してやってんのに』とかなんとか笑いながら言った。


でもすぐにちょっと真剣な顔になってこう言った。


「俺でよかったら聞きますけど?」


恭はいつもこう。

私はこの瞬間が好き。



「茗に比呂の事話しちゃった。」


私は恭だけに聞こえるくらいの声で言った。


「は?」

「だから……」

「それで悩んでんの? 何で茗に比呂の事言ったらダメなんだよ?」

「は!?」


もしかして恭って茗が識好きだって気付いてない!?

やば……。


「やっぱりか」


恭が呟いた。


「なんとなく気付いてたけど……茗って識好きだろ?」

「違うし」


やばいと思いつつ、冷静を装った。


「いや。隠しても無駄だし」

「隠してないし」


ゴメン茗。

心の中で茗に謝るしかなかった。


私が認めないでいると恭は言った。


「じゃあ、仮に茗が識を好きだとしよう」

「だから違うって……」

「仮にだって! 仮に」


あぁ。

茗……ほんとにゴメン。