俺と千花と識は幼なじみで、クラスが違うことがあってもいつも一緒だった。

* * * * *
今のお前は

深見恭二
市村千花
橘識
桜田茗
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『恭にだけ言うんだけどさ。私……識が好きなの』


あの頃の夢を見た。

小6の時、千花に言われた言葉。

言われる前から幼いながらに何となく感じてたけど、実際口から言われるとショックだった。



「恭、また寝てたでしょ。先生睨んでたよ?」


笑いながらそう言って、千花がノートを差し出してきた。


「まじ!?」


当たり前のようにそのノートを受け取った。



「もっとわかりやすく説明してよーッ」


突然、茗のでかい声が聞こえて、俺等は同時にそっちを向いた。



「授業中寝てるやつが悪い」

「寝てない! ちょっとウトウトしちゃっただけだもん!」

「……うぜぇ」



数学の後の識と茗はいつもあんな感じ。

茗っていうのは、高校に入って出会った女友達。


2人の様子を笑って見ている千花を見てると識のことはとっくに吹っ切れてるのがわかる。

俺の見た感じ、中2の終わりには吹っ切れてたと思う。



「ねぇねぇ恭! アロエミルク抹茶風味の話聞いた!?」


突然千花が俺を指差しながら聞いてきた。


「聞いた! ってかその場にいたし!」

「ほんと? その場にいたかったわー」


千花はそう言ってまた笑った。


「まっ、識のことはこれからも見守ってやろうぜ! 2人で」


「……2人で?」


……え?

ちょっとドキッとした。

俺が何も考えずに発した言葉に千花が反応した。


「あ、だ、大事な幼なじみだもんね。見守ってこう2人で」

「お、おぅ!」


俺は至って普通に振る舞った。

そして、10分の休み時間が終わって千花は席に戻っていった。



あんな反応されると

少し期待しちゃうんだけど。