一応言っておくけど……

別に姉貴が嫌いなわけではない。


* * * * * *
電話

橘識
桜田茗
橘杏奈
深見恭二
市村千花
* * * * * *


「ん? 誰か携帯鳴ってねぇ?」


恭の一言でポケットを触った。


……俺か。


素早くディスプレイを見た。


公衆電話……誰だ?



「もしもし」

『あ、識っ?』

「なんだお前か」


声だけで分かる。

姉貴の声だ。


『お前じゃなくて「お姉ちゃん」でしょ!』

「俺がお前の携帯からじゃ出ないからっていちいち公衆電話使うんじゃねえよ」


姉貴からはくだらない電話が多い。

パシリにされることもある。

だから俺は姉貴の携帯からの電話はほとんど出ない。


ある意味着信拒否。


『まぁいいや。あのさ、これから友達と遊ぶんだけど、さっき買い物しちゃって荷物になってんの! だから取りに……』

「だから、俺は行かねぇから」


姉貴の声を遮ってそう言った俺は、素早く電話を切った。


俺を何だと思ってるんだ。

ため息が出る。



「電話杏ちゃんっしょ!?」


電話をしまった俺に恭が笑いながら聞いてきた。


「あぁ」

「杏ちゃん元気?」

「知るか」

「一緒に住んでんじゃん」