流石にさとるも黙っていられなくなった。

「うるさい! 八つ当たりしてくんな! こっちだって色々あったんだよ! 色々! うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!」

「なによ、サンタなんて大嫌い。あたしの前からさっさと消えてよ!」

「あぁ、消えてやるよ! 言うとおり消えてやる、くそったれ!」

 さとるは怒鳴りながら逃げようとしたが、女が腕を放さない。

「あ、待って行かないで!」

「なんだよ!」

「そんなに酷いこと言わなくてもいいじゃない……」 

 女は俯くと目を手で拭い、本格的に泣き始めた。

 さとるは溜息を吐いて周囲を見た。

 痴話喧嘩と勘違いされてもおかしくない。

 あるいは、女が痴漢に襲われていると勘違いされるかもしれない。

 一番心配なのは、香奈子が男と共に様子を見に来ることだ。

 そんなグダグダな展開など、目も当てられない。