さとるはエレベーターに乗り、プレゼントを持ち直し、男に感謝の言葉を言った。
「ありがとうございます」
かろうじてそれだけ言えたが、頭の中は真っ白だ。
「あぁ、いえいえ」
男の声は綿で出来たように柔らかだ。
酒を飲んだのだろう、頬には微かな赤みが浮かんでいる。
素朴な温厚さが、薄い桃色の気配となり昇っているように見えた。
香奈子も酔っているのか顔は赤い。
同じエレベーターに乗り合わせた男が、一週間前まで恋人だった人間とは気づいていないようだ。
そもそも興味が無いのか、隣の男ばかりに微笑みを向けている。
「ありがとうございます」
かろうじてそれだけ言えたが、頭の中は真っ白だ。
「あぁ、いえいえ」
男の声は綿で出来たように柔らかだ。
酒を飲んだのだろう、頬には微かな赤みが浮かんでいる。
素朴な温厚さが、薄い桃色の気配となり昇っているように見えた。
香奈子も酔っているのか顔は赤い。
同じエレベーターに乗り合わせた男が、一週間前まで恋人だった人間とは気づいていないようだ。
そもそも興味が無いのか、隣の男ばかりに微笑みを向けている。


