幻妖奇譚

「サキ……」

 教室に戻る事なく、そのまま家に帰ったあたしは鏡に話しかける。

「沙希、今日は早いのね」
「サキ……ずっと前に言ってたよね。あたしを守るって。その為に邪魔な人は駆除する……って」

「……ええ。確かに言ったわ」

「殺して欲しい人がいるの……」

「いいわよ。誰を?」

 目を閉じてひと呼吸置く。

「……中原耕一」
「……本気なの? 沙希」

 サキが目を見張る。

「本気よ。お願い……サキ、お願いだからッ」

「……沙希が良いなら、あたしはそれに従うまでよ。彼の写真を見せて」

 コクン、と頷き、自分の部屋に行き、プリ帳を手にする。







 ピンポーン

 突然の音に体が跳ねる。

「…………」

 平日の午後に来るなんて、セールスぐらいだろう。
 無視をしようと決めた時、インターホンを激しく連打された。

「……うるさい」

 仕方なく玄関に向かい、ドアスコープを覗く。

「――ッ!!」

 バサッ、と手に持っていたプリ帳が落ちる。

「沙希ッ!!」

 あたしの名前を呼びながら、玄関のドアを何度もノックする。

 なんで来るの――?ゲームは終わったんでしょ?……――中原くん……。