幻妖奇譚

「もう! 一体何なのよ!?」

 逃げるように店を後にした光江。

「ああッ!! もうムカつくッ!!」

 ずんずん、と早足で歩いて行く光江。ふと前方に補導員らしい腕章を付けた、女の人を見つけ、慌てて横道の路地に隠れる。

 コツコツ、とハイヒールの音が近付く。

「ヤバッ……」

 そのまま路地を通り抜け、人気のなさそうな暗い裏道に出る光江。

 あたしたちはその後を道路に点在するカーブミラーで追いかける。

「……そうだ」

 何か思い付いたらしい軽い足取りでキョロキョロ、と何かを探す光江。

「あったあった♪」

 街灯の少ない通りの一角、ぼんやりと点る電話ボックスへ光江が小走りで向かっていく。

 中に入ると早速カバンから手帳を取り出す。

 ……こっからじゃ見えない……。

「近くまで移動しましょう」

 と、サキに言われ、光江のいる電話ボックス――光に反射してガラスが鏡のようになっているおかげで、光江の至近距離まで近付けた。

 パラパラ、とキラキラのシールでデコられた手帳を捲る光江。

 カラフルなアドレス欄の最後のページ……真っ黒く塗り囲まれた名前。

 そこには“ちょ→ウザ娘 関口 沙希”と書いてあった――!!