恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~

「あのね、父さん…」

「なんだ? 妙にあらたまったりして」

新聞をめくったらしく“ガサガサ”という音が聞こえてくる。背中を向けてるから分からないけど、たぶん父もあたしを見ずに新聞のほうを見てるんだろうと思う。

「実は勤さん、あたしより好きな女のヒトがいたらしくて……だから、あたし、あの話はなかったことにしちゃったんだ……」

“ガサ…”

きっと新聞をめくろうとしていた父の手が止まったんだと思う。父にとっては晴天の霹靂だったにちがいない。


でも、まもなく…、

「入籍する前に分かってよかったじゃないか」

…とだけ言うと、再び“ガサガサ”と音を立てて新聞を読みはじめたみたいだった。

たまらず、あたしは振り向いて言った。

「ごめんね、父さん…」

「毬が謝ることじゃなかろう」

あたしを見ず、新聞を見たまま言う父。

「でも、彼のことは責めないでほしいの」

「お前が納得してるんなら、私はなにも言わんさ」