「今、キミにキスをしたら、アイツが化けて出る」
“真面目な顔で言う?”って思ったけど…。
「桐矢のヤツ、まだ俺と毬ちゃんが結婚することを許してくれねぇと思う」
「許してくれるよ、だっておばさんも言ってたじゃん? “他のヒトならダメだろうけど、誠志郎さんなら許すだろう”って」
「それは俺がアイツに勝ったときの話だ。司法試験に合格して弁護士になるまで、俺は本当の気持ちをガマンする」
「え~っ、それまでおあずけってコト?」
「そっ、おあずけだ。楽しみが先に延びたと思えばいいじゃないか」
そう言うと、彼はあたしの唇に自分の人差し指をチョンと当てた。
唇を押さえられたあたしは「ん~もぅ…」と思わずダダをこねてしまった。
「なんだよ。心配して見に来てみたんだが、お二人さん、いいムードじゃねぇか」
「ウチらは、とんだお邪魔虫だねぇ」
そこに店の奥からマスター夫妻が現れた。
「心配かけてごめんなさい。でも、ちゃんとお互いの気持ちを確認し合ったから、もう大丈夫」


