誠志郎さんは剛とちがってオトナだから、あたしがどんなに困らせるようなことをしても怒ったりなんてゼッタイしない。
「それより膝、痛いんじゃね?」
「膝…?」
彼に言われてはじめて気がついた。ストッキングの右膝のところが破れて、むき出しになったナマ膝から赤黒い血が流れ出ている。さっきクルマに轢かれそうになったときにケガしたんだと思うけど、全身が凍りつきそうなほど冷たくなっていたから、痛みを感じなかったんだろう。
「大丈夫だけど……」
ただの偶然かもしれないけど、剛が死んだ日、他校のサッカー部のワゴン車にぶつかってコケたときにケガしたのとまったく同じところを擦りむいていた。
「他にケガとかしてない?」
「たぶん……」
「そっか。とにかく毬ちゃんが生きててよかった」
「生きてて…よかった…?」
「部屋を飛び出すとき、“もう生きてなんていたくない”なんて言ってたから心配になっちまって……桐矢に続いてキミまで失ってしまったら俺はもう……」
辛そうに目を伏せる彼。


