“やっぱり剛に近づいているんだ……もうすぐあたしも剛のところに行くんだ……”
ピンと張り詰めた師走の冷たい空気のなか、凍りつきそうな意識の片隅で、そんな思いがよぎったとき…、
「ま、毬ちゃん、こんなところにいたのか!? 今そっちに行くっ。下手に動くなっ」
…と叫ぶ誠志郎さんの声が聞こえてきた。
でも、コレも死ぬ直前に思い出の中から聞こえてくる幻聴だろうとあたしは思った。
「え…!?」
だけど次の瞬間、あたしの左手を包み込んだ暖かさは、まぎれもなく現実のぬくもりだった。
右手で涙を拭いて目を開けると、差しのべられた誠志郎さんの右手と、道路の真ん中でヘタれ込んでいるあたしの左手がつながれていた。
「立てるか? 立てるなら歩いて向こう側まで渡るぞ」
「誠志郎さん……」
彼に手を引かれて立ち上がったあたしは、凍りつきそうになっていた足を右、左とぎこちなく動かして、ゆっくりとした足取りで横断歩道を渡り切った。


