たとえ現実に存在していても、誰からもその存在を認識されていないのなら、あたしはいま現在ここにいないのとおんなじだ。
中学のときもそうだった。あの頃のあたしは学校のどこにも居場所がなくて、まるで透明人間みたいだった。
だから―――
だから明東大サッカー部のヒトたちが仲間に入れてくれたときは本当に嬉しかった。
だけど、剛はもういない。
おねーさんとも、もう逢えない。
あたしはまたひとりぼっちになった。ひとりぼっちの透明人間に戻ってしまった。
そう思うと目の奥からじわっと涙がわいてきて、すぐに目を開けていられないほどになってしまった。
ビュンビュンとあたしの横を走り抜けるクルマは冷たいつむじ風を巻き起こし、ソレは部屋にコートを忘れてきた薄着のあたしの全身を情け容赦なく切り付けた。
涙も凍らせるほどの冷たい風に徐々に体温を奪われ、やがて耳や手足の指先の感覚がなくなりはじめた。
右手で自分の左手を触ると、氷みたいに冷たかった。だけど、あたしはコレと同じ感触の手を知っている。3年前、病院の霊安室で握った剛の手がコレとまったく同じ感触だった。


