「長い時間、おつかれさま。今日はもう帰っていいぞ」

メガネの下で循環器内科の医師・間宮昭人(マミヤ・アキト)の目が微笑んだ。

…ってゆーか、実はこのヒト、あたしの父親。そして、あたしの担当医でもある。

「やったァ」

病院の診察室で父……つまり医師と向かい合って座っていたあたしは、椅子から立ち上がりながら腕時計を見た。

…PM3:17

今日、時計を見るのは、いったいこれで何度目だろう?

「どうした、毬(マリ)。今日はヤケに時間を気にしているみたいだが」

「うん、ちょっとね」

言いながら笑みがもれてしまう。

「その顔は、なんかいいことでもあるんだな?」

“お見通し”という感じにニヤリとする父。

「別にね、たいしたことじゃないんだけど。…じゃ、バイバイ」

「検査はこれで終わりじゃないんだ。あまり無茶はせんようにな」

「うん、分かってる」