『舞? 』


(そして名前を呼ぶなぁっっ! 反則だろっ。)


『さっ...さいならっ! 』


あたしは今度こそ扉を開けて王子のお屋敷から逃げだした。


『マタコイ...マイ...ギャッ...。』


『またねっ! レイヴンっ! 』


門でカラスに声を掛けられ普通に挨拶出来る時点で、かなりテンパってるんだろう。


バス停まで全速力で走る。

心臓がどきどきして破裂するんじゃないかと思った。

今は、王子が死神だとか。

かなりやばい状況だとか。

そんな事より。


頭からあの笑顔が離れない。


(あれ? 何か忘れたような....そう言えば。)


『ああっ!!!』


バス停で叫ぶと隣に並んでたおばさんが怪訝そうな顔をした。


(告白の返事...王子から聞いてない。駄目でもはっきり言ってくれた方が良いのに...その前に逃げたからか。)


『あたしの馬鹿。』


今度は小さな声で呟いた。