(居たっ! )


まだ早い時間だからバスの中は人があまり乗ってない。


王子は後ろの座席で背筋を伸ばして静かに文庫本を読んでいた。


(何の本かな? )


あたしは王子の前の席に座る時、ちらっと本の題名を盗み見た。


【車輪の下】
【ヘルマン ヘッセ著】


(うっ...難しそうな本。でも今度読んでみようかな)

別に何か話す訳じゃないけど、学校までの少しの間の時間が毎日の楽しみなんだ。


学校に着くとすぐ王子は取り巻き連中に囲まれて見る事も出来ないし。