『皇花っ! 』


うわ…こっち来た。


廊下のでっかい置物の影に隠れ、なるべく小さく縮こまる。


このままじゃ…見つかっちゃうよ。


途方に暮れて息を殺してると目の前に真っ黒の大きな尻尾が。


…ケルベロスだ。


不思議に思ってると良く通る落ち着いた声が父上に言った。


『どうされましたか? マスター』


『皇花を見なかったか? 』

『…いえ…』


『全く、俺が呼ぶと直ぐ何処かに…奴ももう14だ隠れてばかりでは困る…』


『…マスター、急がなくても良いのでは? 皇花様はまだ14ですよ』


ケルベロスはまだ、に力を入れて言った。


『…俺は…』


父上は小さく嘆息して言葉を続ける。


『…奴に…あぁ…もういい…見かけたら声を掛けろ』

漆黒の髪を片手で払う仕草は子供の僕から見ても凄く様になっててかっこいい。

『承知しました』


足音荒く父上が去り僕はやっと身体の力を抜いたんだ。