第10話
11月に入り、ますます様態が、悪くなった。

点滴、注射、薬漬けのまいにちだった。顔色も、冴えない。

しかし、僕が行くと彼女は、まんえんの笑みを、見せてくれた。僕の前では、彼女は女性だった。

薬!これが、彼女を苦しめた。脱毛である。日に日に、落ちる髪の毛。体全体、やつれて行く…。

僕が、来る日にははやくから、着替えて薄化粧して…。口紅、さして…待っている。

母親は、それが嬉しくて…悲しくて…。あの事故が、ちえみの一生を、縮めた。あの日、以来

僕達の騙しあいが、始まった。一度も、痛い。辛いと、言わない彼女が…いじらしい。

愛しいと、僕は初めて感じた。病室出ると、決まって涙が溢れて行く。自分に、反して…。

12月に、入り彼女は、意識不明になった。この日は、雨が降ってた。