あれを食べたら、自然と笑顔になるんだよね。


 でも、恭子さんの前では、笑顔を見せないようにした。


 そうゆう時は心のなかで笑うんだ。





 でも、もう食べられない……。



「はぁ……」

 アタシは空に向かってため息をついた。


 ブレザーのポケットからタバコを取り出し、一本口にくわえて、ライターで火をつけた。


「プハァァァァァーーー」

 ホントにタバコは落ち着くなぁ。

 今日何本目だろ?

 ああ、何十年後かのアタシの肺は真っ黒だな。


「オレにもくれ!」

「えっっ?」

 横に目をやると、泣いていたはずの大樹が、けろっとした表情で、掌を出している。


「もう、泣かないの?」

「あ?いいから早くくれ」

「うん…。いいけどぉ…」

「早く!ホラホラホラ!!!」

 どんどんとアタシの方に掌を突き出してくるので、言われるがまま一本手渡した。


「ん、ん、ん」

 次に大樹は、そのタバコをくわえたまま顔を突き出してきた。

 よく見ると、目が腫れている。

「あんた、何も持ってないのね!」

 と言いながらアタシは火をつけてやった。








 アタシ達は、次の授業をサボった。