「そんなことない!」

 お母さんのその言葉は家中に響きわたった。





 少しの間、沈黙が流れた。







「じゃ、何でそうめんばっかなの」

「夏だから」


 夏だから?そんな簡単な理由で、そうめんなの?

 それをしょっちゅう食べさされているこっちはいい迷惑だわ。


「ホントにそうめん飽きたんだけど」

「嫌なら、食べるな!」

「ねぇ。他の料理は作らないわけ」

「作ってるじゃない。毎日、朝昼晩そうめんってこと、ないじゃない」


 ま、そう言われてみればそうか…。

 いやいや。そうじゃないにしても、そうめんの頻度はかなり高い。


「でも、夏前ぐらいからそうめんばっかじゃん。そうめんばっかだから、私のカラダ、そうめんになっちゃいそう」

「なればいいじゃない」

「はぁ……」

 私は思わずため息をもらした。 

 チカラががどこからかスルスルと抜けていって、その場にヘナヘナと座り込んだ。

 なればいいじゃない。

 そう言われたらもう、何も言い返す気になれなかった。