(唯side)

「聞いてよ、麻美!倉田くんのメアドげっとしたの」

 唯は、携帯画面を友達の麻美に見せて笑顔で言った。

「マジで?やったじゃん。アイツと無理にでも仲良くしたかいがあったよね」

「ほんとそれ。まぁもう用ないっちゃないんだけど、付き合うっていくまでに協力が必要だから、まだ、ね?」


「あんたって本当イイコぶんのうまいわ。あたしもそのうち裏切られんのかな?」

「やだぁ、麻美は唯の大事なだいっじな友達だよ。」

 
大げさなくらいな猫なで声で言って、ぎゅっと手を握った。






「もうまじ死んでもいいくらい幸せ……」

部屋のベットにダイブして携帯を胸に幸せをかみしめる。
遊び人だって事は知ってたし、彼女だって何人いるか分からない
それでも幸せだった。

ずっと好きだった。倉田三月の事が。1年の頃から、ううんずっと、中学の頃から、ずっと。
見てただけだった。いつも倉田クンの傍には、アイツがいた、アイツ……一之瀬 雪南。

大嫌いだった。邪魔だった。今だって死んでほしいと思っている。
気のないフリをしているだけに違いない。
何も興味がないって顔して。本当にあんな女大嫌い。

仲良くするつもりなんて毛頭なかった。したくもなかった。
だけど、欲しいものを手に入れるためなら、手段を惜しまない。

今日、メアドを教えてくれたのは、何でだろう。
どうして私も私で聞けなかったんだろう。

倉田クンの周りにたかる馬鹿で低能な女のように、がめつくはなりたくなかった。
機会を伺っていた。

……今日、やっと叶った。

「唯の苦労は、無駄じゃなかったんだよね」

幼馴染だとかいって、アイツもアイツで倉田クンの事を好きなんじゃないだろうか。
それは皆思っている。何だかんだで、本当に邪魔で憎くて仕方がない。
アイツの存在があるから、倉田クンは遊びに走るのだろうか?

倉田クンは……一之瀬の事が好きなのか。

ううん、そんなことない……考えたくもない。


「とりあえず、倉田クンは唯がもらうんだから」

天井を見つめて、嫌な笑みを浮かべた。