「……女の子なら、他にもいっぱいいるでしょうが。」


いつものようにできない。


「セツも女の子だろ。他にもっていわれてもねー。」

「……私は……私は……っ、そういう対象じゃない!」




“いつも”が


            わからない。





立ち上がると、ココアの缶が倒れて、転がった。

三月は私を見上げて

笑顔もなんもない、読み取れない複雑な顔をした。


「何怒ってんの」

「怒って……なんかないよ」


胸が苦しくて、息ができなくなりそうだった。

綺麗な整った顔が

綺麗な瞳が

私の醜い顔を映している。


「そーゆー対象として、お前を見たことは一度もねーから。」

「みつ……」

「心配すんな。」

三月も立ち上がって、背伸びをして、私に視線をやった。


「それだけ大事ってことだよ。女としてかどうかじゃなくて、本当の意味で大事。」


そして、私の頭を何度か撫でて

屋上を出て行った。


体が、熱かった。


「私…何…言って………」


頭が、ぐちゃぐちゃだった。

涙が

何故か止まらなかった。