――

「あ、ごめん。待った?」



「ん。いや、いいよ。じゃ、帰ろっか」



空は夕焼け色に染まっていた。



「…何話したの?」



「もう二度と現れんなって。そんくらい」



ホントに?そう聞きたかったけどやめることにした。



「中から…見えた??」



「だから、助けにいったんだけどな」



春樹はいつも笑顔でいるよね。



「うん…ありがとう」



「多分もうあいつこねぇよ。…多分な?万が一の時は俺が助けてやる」



「…うん」



今一番胸がドキドキしてる…。



どうせ春樹は私の気持ちなんか知らないんだから。



私はいつのまにか歩くスピードを遅めていた。



春樹の広い背中。思い切って抱きついてみたい。



好きな人と手をつないで、温もりを感じて…。



「どした?」



「なんでもないよ」



後ろを見てみると春樹と私の影。



丁度、手と手がつないでいるみたいにコンクリートに写った。



こんなことでも幸せだって思えるのはすごいことだね。



いつか伝えてみたい。



まだ言える勇気なんてないけど、いつか春樹に伝えるんだ…。