【実話】ありがとう…。

「コンコンッ」



「たかさんどう?」



「副作用がかなりキツい。昨日も今日も抜けなくって、目眩も酷いし、辛い…。もう止めたい……」



「たかさん…」



「又、明日から抗がん剤始まるし…ッ…ごめん…グスッ…ッ…望の顔…見たら…グスッ…ウッ…」


背中を擦りながら、

「大丈夫。泣きたい時は泣けば良いよ」


後は何も言わず、ただ黙って背中を擦り続けた―。


暫くすると、たかさんも落ち着きを取り戻し、

「頭、洗えないし、体拭いてくれないか?」


「うん、ちょっと待ってて」

そう言い、病室を出て温蔵庫へ行き、熱い蒸しタオルを数本持って来る。


「ちょっと熱いけど、我慢してね」

背中にタオルを乗せると、

「あちーっ、けどサッパリするな」



「そう?良かった」

と微笑む。


使ったタオルを片付け、洗濯室に持って行く。


部屋に戻り、他愛もない話をしていると、ベットに横になったたかさんの手がモゾモゾと何かを探していて、私の手を掴むと、安心したように微笑みながら、話をする。


「望、仕事辞めて、俺の傍に居てくれないか?」



「たかさん?」



「今のは冗談!」


暫くして、バスの時間になり、

「たかさん、そろそろ帰るね」

寂しそうな顔をし、仕方無く、

「うん…またな」