【実話】ありがとう…。

次の日、仕事は休みだったけど、たかさんの所に行く気にはなれなかった。


気を紛らわす様に、洗濯をしたり、部屋の掃除をしたりしていると、家の電話が鳴った。


「はい…」



「…俺。昨日は本当に悪かった。嫌な思いさせて…」

本当にすまなそうに話すたかさん。


「気にしてないって言ったよね。豊さんがメール送ったんでしょ?!」



「あぁ…」



「なら、たかさんが気にする必要ないよ。電話する為に態々出て来たの?だったら早く部屋に戻った方が良いよ」

信じたい気持ち半分、信じられない…電話で話していても、自分でも言い方が冷たいのが分かってた…。


「んー。月曜日から抗がん剤始まるし、髪抜けるなら、坊主にしようと思って降りて来た…。ウエッ」



「大丈夫、たかさん?」



「う・うん。コンコンッ、コンッ、コンッ…ウエッ」

酷く咳き込み始め、心配になり部屋に戻るように促す。


「咳したら、血の塊出た…。肺も痛てーし」



「いいから、部屋戻りなよ!」



「ヤダ!部屋に戻ったら、また点滴だし…」



言う事を聞いてくれない…最後はもう悲鳴に近い叫びだったかも知れない―。