【実話】ありがとう…。

「うっ…グスッ…グスッ…ウッ…」



「のっちゃんは、俺の家族だと思ってるし、姉ちゃんなんだよ。だから辛い顔は見たくないし、幸せになって欲しい。これ以上のっちゃんの事、傷つけるなら、相手をボコボコにしてやる!」



「弘…ありがとう。その気持ちだけで充分だから。ね?」



「俺の気が済まない!姉ちゃん傷つける奴は、俺が許さねえ!幸せになって欲しいんだ。こんな弟が居る事、忘れないで!」


嬉しくて、涙がボロボロと零れ落ちる―。


「泣くなよ~」



「嬉し泣きだもん!ありがとね、弘」

望は、泣きながら優しく微笑んだ。


雅巳もカウンターの中から微笑んでいた。


その後は、他愛もない話をし、弘司はバカみたいにふざけ、一生懸命笑わせようとしてくれた。


気が付くと、午前1時を過ぎていた。


「雅巳、会計して」



「今日は、俺の奢り。帰ってゆっくり休めよ!」



「でも…」



「また、来てくれたらそれで良いから!気にするなよ!」



「うん…ありがとう。御馳走様!また顔出すね!」

そう言い、店を後にし、近くに止まっていたタクシーに乗り込み、行き先を告げる。