【実話】ありがとう…。

「あっ、のっちゃん来てたんだ。久し振りだね!元気だった?」

人懐っこく笑う弘司。


弘司もまた幼なじみで、雅巳の弟。


小さな頃から、家族ぐるみの付き合いをしていて、二人とも弟の様に可愛がっていたし、家族皆で旅行に行ったり、キャンプに行ったりしていた。


「うん、久し振りだね!あんまり元気ではないけど…」

と苦笑いをする。


「隣、良い?」


一瞬戸惑ったけど、頷く。


「兄ちゃん、俺ビール貰うね!」

勝手にグラスを出し、ビールサーバーからビールを注ぐ弘司。


ビール片手に席に座り、

「お疲れ様~」

と私の持っていたグラスに当て、グビグビとビールを飲む。


「プハァ~、うめ~。やっぱ一杯目はビールだよな!」


今、上機嫌で話していた弘司が急に黙り込む―。


ふと振り向くと、こちらをジーッと見ている。


「何?」



「のっちゃん、泣いた?目、少し赤いし腫れてるから…」


苦笑いするしかない望。


「何かあったの?酒飲んでるし、さっきから気になってたんだ」



「…彼氏に…振られちゃった…」

今にも泣き出しそうな顔で話す望。


「のっちゃん、泣きたい時は、思いっきり泣いても良いんだよ。我慢は体に良くないから…ね?」