【実話】ありがとう…。

「ごめん…」



「気にすんな!望、腹減ってないか?飲み物は?」



「食欲ないから…。お酒頂戴」



「酒!?珍しいな、お前が酒だなんて…。ちゃんと物食べるなら酒出してやる」



「分かった」



「ほら!普段酒飲まないんだから、甘めのやつにしたぞ」

そう言ってグラスをテーブルに置いた。


「ありがとう…」


グラスに口を付け、

「うん、飲みやすくて美味しい」



「当たり前だろう?誰が作ったと思ってるんだ!?」

雅巳は、自慢気に笑った。


無言でグラスに手を伸ばし、お酒を飲む望。


雅巳もまた、お客さんに頼まれた料理をせっせと作っている。


「お代わり貰える?」



「お前さぁ…普段飲まない癖に、ペース早すぎだから!少しはペース考えて飲めよ」



「……飲まなきゃ、やってらんない!」


雅巳は何かを察したのか、それ以上は何も言わず、お酒を出してくれた。


少しすると、料理がテーブルに置かれた。


「適当に作ったから、食えよ!」


「うん…ありがとう」

一口食べてみる。


「美味しい…」



「だろ?」

満足そうに雅巳が笑う。


少しすると、店のドアが開き、弘司(ひろし)が入って来た。